14.「変化」
コロナ禍になり、メンバーともスタッフさんとも、会えなくなっていったとき、僕はギターと自分の人生と向き合うようになる。
色々な治療、色々な弾き方を試したけど右手が改善する兆しはない。
むしろ悪くなっていっているのが現実。
字も書けなくなっていき、日常生活にも支障が出始める。
この時になるとピックを持てないのはもちろん、ギターを抱えてるだけで右手が硬直してしまい、苦しいという状況になっていた。
ギターのチューニングをすることすらままならない。
このまま弾けなくなるのを待つしかないのか、、、
何ヶ月かが経過し、コロナが少しだけ停滞し、やっとスタジオで顔を合わせて音を出せるようになっていった。
しかしここで僕に変化が起こる。
ある時から、スタジオが楽しくなくなっていったんだ。
むしろスタジオにいるのが苦しかった。
僕はスタジオで音を出している時が何よりも楽しいと思っているような人間。
ギターがうまく弾けなくても大きな音を鳴らしている時が一番幸せだった。
それなのにだ。
別にメンバー間の仲が急激に悪くなったわけではない。
だからこそ問題なのだ。
弾けなくて苦しいっていう想いを、待っててくれているお客さんのため、メンバーのため、スタッフさんのためって、必死にあらがい続けてきたけど、ふと思ってしまったんだ。
「大介、良くやったよ。もう充分だよ。ゆっくり休もう。」
人生は、今自分が乗っているレールだけじゃない。
スタジオの帰り道、わざと違う道で帰った。