15.「決意」
2020年10月、新しいアルバムを制作していた僕はある決意をしていた。
「次のアルバムでバンドを、音楽をやめよう」
まず誰よりも先にこの決意を伝えなきゃいけない人たちがいる。
家族だ。
はっきり言って、僕の一番のファンで、僕がギターを弾くことを一番応援してくれているのは家族だと思っている。
まずこの決断を伝えないといけない。
大事な話がある。
声を上擦らせながら、言葉を紡ぐ。
「バンドを、音楽を、ギターをやめます、、、」
僕の状況を知っていたとはいえ、かなり動揺していた。
なんだかんだ言いながら、こいつがギターを止めるはずないって思っていたんだと思う。
僕は病気になってから、家族の前でギターを弾かないようにしてた。
今の情けない自分を見せたくなかったからだ。
しかしそこで初めて今の僕の状況を見せた。
Cのコードすらまともに弾けない現実。
汚く響いたギターを抱えながら、
「こんな状況だからさ、止めるよ。音楽だけが全てじゃないし。
何か新しい仕事見つけるかな。インテリアデザイナーとかいいかも(笑)」
わざと戯けて見せたけど、家族はみんな泣いていた。
それを見て僕も泣いた。
多分今までの人生で一番泣いた。
「お疲れ様でした。素敵な音楽を残してくれてありがとう。」
そう言ってくれた言葉を胸に刻みながら、一晩中泣き続けた。
僕のギター人生はここで終わった。