22.「信じてもらうということ」
ギタリストというものは、とても悩ましい生き物で、気持ちが元気になると新しいギターが欲しくなる(笑)。
プレイは下手だけど、耳は良い状態だから、もっと色々なレフティギターに触りたくなった。
今のギターはレフティになって、最初に手に入れたギターだから思い入れは強いけど、如何せん少しチューニングが甘かった。
プロ仕様のギターが欲しい。
そう思った僕は、細川大介監修のギター「紅桔梗」を作ってくれた、島村楽器の開発担当の吉沢さんに電話する。
全ての事情を話し、こんなギターが欲しいんですと伝えると、
「わかりました。〜日に〜〜にある島村楽器に来てください」
との返答が。
そして提案していただいた日に、ドキドキしながらその場所へ向かう。
到着した時、僕の目を疑うような光景が広がっていた。
そこには、電話で希望していたギターが一本ではなく、何本も用意されていた。
「大介さん、この中で好きなギターを持って帰ってください。」
僕はびっくりした。
なぜならまだ僕のギターレベルは素人同然だからだ。
しかし吉沢さんは、
「大介さんはきっと左手でも素晴らしいギタリストになれます。私はそう信じています。」
人を信じるってそんな簡単なことじゃない。
大人になれば尚更だ。
だからこそ余計に嬉しかった。
この病気になって色々なことが変わった。
テクニカルギタリストとして話題になっていき、その当時はライブをやれば、色々な人が僕を評価してくれてた。
「ギター最高です」
「ギター教えてください」
「夢のギターを作りませんか」
しかし、この病気にかかりプレイに精彩を欠いてくると少しずつ、周りの人がいなくなる。
当たり前にあることなんだけど、これは本当に辛かった。
だからこそ、こんな僕を信じてくれた島村楽器の吉沢さんという人が、僕は心から大好きだ。
レフティギタリストになるだけじゃない。
日本一のレフティギタリストになって、この恩を返していくんだ。
そんな想いと一緒に、いただいたギターを持って家路に向かう。
レフティギタリストとしての最初のライブは、このギターを絶対に使おう。