3.「発症まで」
きっかけは今でも昨日のことのように覚えてる。
「大介、そんな弾き方だったっけ?」
2018年6月23日、LACCO TOWER、メジャー4枚目のフルアルバム「若葉ノ頃」を出してからの2マンツアー「五人囃子の駆け落ち騒ぎ」、福岡BEAT STATIONでの出来事だった。
その日の対バンはTHE BACK HORN。
ギターの栄純さんは良くしてくれている先輩の一人で、僕によく「大介は絶対に現代のギターヒーローになれる」と激励の言葉をくれていた。
その一言は二人でギター談義をしながら、リハーサルでお互いのプレイについて語っていた時だった。
確かに2017年に「遥」というアルバムを作って以降、ギターが何か弾きづらいなと感じていた。
ギターの高さがしっくりきていないのかと思い、かなりの頻度で、ギターの高さ(ストラップの位置)を変えていた。
だから栄純さんはギターの位置のことを言っているのかなと、そのときは僕も深くその言葉を受け取らず、ライブを終えた。
自分でいうのもなんなのだが、2013年に自分たちの会社アイロックスを設立し、2015年に日本コロムビアでメジャーデビューして、僕の生活はとにかく忙しかった。
メジャーアーティストしても、会社員としても新人。
ガムシャラに働くことが正義だと思っていた。
2015年から2020年まで、ほとんど休んだ記憶がない。
平均睡眠時間は3〜4時間。
会社を作った時、デビューした特、僕はすでに30歳を超えていた。
だからとにかく早く売れたかった。
賞味期限がなくなる前(今思えばこれは思い込み)に、形にしたかった。
ゆっくりと自分のギタープレイを見直すこともなかったし、練習のペースもめちゃくちゃだった。
そして、
2018年7月6日、名古屋CLUB QUATTRO公演でのSUPER BEAVERとの2マンライブの日、栄純さんの言葉を思い出して、リハーサルが終わった後、久しぶりに基礎練習をしてみた。
ギターを始めたばっかりの時からデビューするまで続けていた、簡単なやつだ。
基本速度はBPM120くらいから、ギターの指板を1234って16分音符で指を動かしていくシンプルなやつ。
結果、
やっぱり久しぶりの基礎練習、BPM120では全然弾けない。
参ったな、速度を5落としてBPM115でやってみる。
、、、弾けない。
おかしいなと思い、5ずつ下げるを繰り返す。
、、、おいおいおい、まじか、
全然弾けない。
BPM80にしても弾けない。
結果、
BPM60でギリギリ弾けるという状態になっていた。
やっぱり基礎練種を怠るのはダメだなと落ち込みはしたが、これから基礎練習をすれば大丈夫と楽観的な気持ちで、その日もライブを終えた。
しかしこの後、僕の身体にとんでもない異変があることに気づくだなんて、その時は微塵も思ってもいなかった。