9.「長い夜」
ホールツアーはイベント的には成功だったと思う。
バンドとしても会社としても新しいチャレンジだったし、また新しい問題や目標ができて良いツアーだった。
しかし僕のプレイは散々。
全く思い通りにプレイができない。
そして2時間超のステージをこなすには、痛み止めの薬を飲まないと最後まで弾くことすらできない状況になっていた。
今だから言うけど、ライブ終わりはずっと一人で泣いていた。
プロギタリストして、皆からお金をもらって生活しているのに、こんなプレイしか出来ない自分が恥ずかしかった。
お客さんはもしかしたらあまり気にしてはいないかもしれないけど、僕はずっと「プロギタリストとして失格」と思っていた。
この頃から今まで以上に、心が不安定になっていく。
ツアーも終わってニューアルバムの制作にかかっていくことになるが、全然弾けないからレコーディングが終わらない。
この病気の怖いところは、いつ症状が重くなったり軽くなったりするのかが分からないところでもある。
起きてすぐギターを弾いて「調子良い!今日はいける!」と思っても、30分後には今までで一番弾けなくなっていたり。
レコーディングの時期は地獄の日々だった。
1曲録り終わるのに40時間くらいかかっていた。
ほぼ2日寝ないっていう。
それでもレコードは出さなくちゃいけないし、待っててくれているラッ子の皆がいる。
そうして意地で作り上げたアルバムが「変現自在」。
思い通りに弾けないながらも、よく頑張って作り上げたと思う。
この先、ツアーもレコーディングもずっと続いていく。
しかし右手が改善する予兆もない。
僕はこの後どうなっていくんだろうと、不安と戦いながらの日々が流れていく。