16.「答え」
家族に伝えた次の日、すぐにメンバーに「話したいことがある」と伝え、日程を決めて会うことにした。
コロナ禍で、外に出ることすらあまり是とされていない状況で、メンバーだけを召集する。
これがどういう意味なのか、なんとなくメンバーも察していたと思う。
そこで僕はお願いした。
「申し訳ない。
気づいてると思うけどもう手が限界なんだ。
次のアルバムで、、、僕はもうこの船を降ります。
、、、LACCO TOWERを辞めたいと思う。
けど僕抜きでバンドを続けて欲しいって思ってる。
新しいギタリストを入れて、絶対にLACCO TOWERを続けて欲しい。
このバンドはこんなところで終わるバンドじゃないんだ。」
心からのお願いだった。
僕はLACCO TOWERの音楽を信じていた。
そして、僕じゃないギタリストが入れば、きっとバンドはもっと上にいけるって思っていた。
しかしメンバーの返答は、僕の考えの斜め上をいっていた。
「ギターが弾けないなら、しばらくバンドを休止してもいい。
それでもギターが弾けなかったら、ギターが弾けなくてもいい。
ステージで踊ってくれててもいい。
なんでも良いからバンドにいて欲しい。
お前とバンドをやりたいんだ。
大介が辞めるならLACCO TOWERもそこで終了する。」
きっと普通の人ならこの言葉をとても感動的に捉えると思う。
しかし僕は心の底から動揺したんだ。
嬉しいけど、嬉しいけど、どうしたらいい。
辞めたらLACCO TOWERは無くなっちゃう。
けど今の状況でバンドを続けてるのも辛い。
かと言ってギターを弾かなくてバンドを続けるなんて、僕の人生それでいいいのか?
今、目に溜まっているのは嬉し涙なのか、悲し涙なのかすらわからない状況で僕は、
「ありがとう。少し考えてみる。」
そう言ってお茶を濁し、その場を後にする。
電車の窓から外を眺めていた時、トンネルの闇に吸い込まれていくのが、なぜかとても怖かった。